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ぶどう膜炎外来

担当医からのメッセージ

ぶどう膜

ぶどう膜炎とは、眼の中に炎症が生じる疾患です。炎症が起こす原因により、治療法も予後も大きく異なります。また、治療が長期となったり、一旦、炎症が治っても再発することもあります。疾患について理解を深めていただき、最適な治療を検討できるように、患者様とコミュニケーションをとりながら、診療にあたっております。気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。

疾患概要

眼の中に炎症を起こす病気は総じて「ぶどう膜炎」と呼ばれます。炎症による直接の影響、或いは炎症による眼の合併症(白内障、緑内障、網膜浮腫など)で視機能に深刻な影響を生じる病気です。ぶどう膜炎の原因には、全身免疫異常、感染症、外傷、悪性腫瘍など様々なものがあります。その原因にあった適切な炎症の治療(消炎)と、眼の合併症の予防と治療が大切です。ぶどう膜炎の患者様が生涯に渡り良好な視機能を保てるよう、専門外来ではそれぞれの患者様にとって最適な治療を選択しています。

症状

ぶどう膜炎の症状には、視力低下、かすみ(霧視)、目の前に虫が飛んで見える(飛蚊症)、充血、眩しさ、眼の痛みなどがあります。また、炎症そのものではなく、ぶどう膜炎の合併症が理由で視力低下、霧視、視野異常などの症状が進行する場合もあります。

図1 HLA-B27陽性前部ぶどう膜炎による毛様充血
図1 HLA-B27陽性前部ぶどう膜炎による毛様充血
図2 糖尿病虹彩炎による前房蓄膿
図2 糖尿病虹彩炎による前房蓄膿

ぶどう膜炎をおこす代表的な疾患と症状

サルコイドーシス

サルコイドーシスは肺や眼をはじめ、色々な臓器に小肉芽腫ができる病気です。
ぶどう膜炎や網膜の血管の炎症が起こり、目がかすむ、まぶしい、充血、物を見る時に、黒い小さい点が飛ぶ(飛蚊症)が起こります。目の中で強い炎症が起こったり、炎症が長時間続くと網膜の中心部(黄斑)が腫れたりします。緑内障や白内障などの合併によって、視力が著しく低下する場合もあります。他に全身症状として、咳や息切れなどの肺の症状、皮膚の結節などがあります。
サルコイドーシスは、何らかの病原微生物の感染によって起こる、過剰な免疫反応が原因と考えられています。

フォークト‐小柳‐原田病

原田病はメラニン色素を作る細胞に対する自己免疫疾患と言われています。
眼に症状が出てくる前に何らかの症状がみられることが多く、頭痛、めまい、微熱、頭皮のピリピリ感、全身倦怠感など風邪のような症状がみられます。さらに、感音性難聴、耳鳴りなどの耳の症状もみられるようになります。
発症早期では、眼の充血、眼の痛み、光過敏などが認められます。また、症状が進行すると、視力が低下することがあります。発症後半年から数年たつと、皮膚の白斑、頭髪やまつ毛、まゆ毛で脱毛、白毛などがおこることがあります。
原田病の正確な原因はわかっていませんが、自己免疫反応によるものと考えられており、遺伝的な要因や環境的な要因がある可能性も言われています。

ベーチェット病

ベーチェット病は、全身のさまざま臓器に急性炎症性発作を繰り返す難治性の病気です。
眼にはぶどう膜炎が生じるため、かすみがかかったように見える(霧視)、虫が飛んでいるように見える(飛蚊症)、まぶしく感じる(羞明感)、視力低下、眼痛、充血などの症状がみられます。全身症状として、口腔粘膜、皮膚、外陰部の潰瘍や、関節、副睾丸、血管、消化器、中枢神経に病変が生じることもあります。
原因は不明ですが、ヒトの免疫反応に重要な役割を担うヒト白血球抗原の中の特定の抗原や炎症が生じる時にできる蛋白質の一部によるもので、遺伝的な素因も関係あるのではないかと言われています。

治療

ぶどう膜炎の炎症の治療には、副腎皮質ステロイド薬の点眼、眼局所注射の他、副腎皮質ステロイド薬の内服や免疫抑制剤、生物学的製剤の全身投与があります。また、ぶどう膜炎が感染症による場合は、その原因に応じて抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬などが用いられます。ぶどう膜炎の合併症に対しては硝子体手術、角膜移植、緑内障手術などが必要となることもあります。原因疾患によっては膠原病リウマチ内科や血液内科、呼吸器内科、神経内科、腎臓内科、小児科での治療が必要となることもあるため、適切な専門科をご紹介し連携しています。

a 治療前。視神経乳頭浮腫、星芒状硬性白斑がみられる

a 治療前。視神経乳頭浮腫、星芒状硬性白斑がみられる

b 治療後。視神経乳頭は境界明瞭となり硬性白斑も減少した。

b 治療後。視神経乳頭は境界明瞭となり硬性白斑も減少した。

図3 猫ひっかき病(バルトネラ菌感染によるぶどう膜炎)の眼底写真。

検査

視力、眼圧、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査の他、視野検査、網膜・脈絡膜に浮腫や異常がないか、など眼球の様々な部位の異常を検査します。

図3 レーザーフレアーメーターFM-600a(炎症があると増加する前房水中蛋白を測定する)

図4 レーザーフレアーメーターFM-600a(炎症があると増加する前房水中蛋白を測定する)

図4 DRI OCT Triton(網膜の浮腫、脈絡膜の厚みなどを測定する)

図5 DRI OCT Triton(網膜の浮腫、脈絡膜の厚みなどを測定する)

図5 超広角眼底カメラ Optos Daytona Next(広角眼底写真、自発蛍光写真を撮影する)

図6 超広角眼底カメラ Optos Daytona Next(広角眼底写真、自発蛍光写真を撮影する)

原因検索法には血液・尿検査、胸部レントゲン、脳MRI、髄液検査、聴力検査などの全身検査に加え、眼内液を採取して行うウイルスPCR検査や病理検査などがあります。血液・尿検査、眼内液の検査の一部は当院で可能ですが、その他の詳しい検査は近隣または患者様のご自宅近くの医療施設をご紹介し依頼させていただきます。