- 白内障
- 緑内障
- 網膜剥離
- 黄斑円孔
- 黄斑上膜(黄斑前膜)
- 硝子体出血
- 加齢黄斑変性
- 斜視
- 弱視
- 近視
- 乱視
- 遠視
- 老視・老眼
- 糖尿病網膜症
- ぶどう膜炎
- ドライアイ
- 霰粒腫
- 麦粒腫
- 流行性角結膜炎
- コンタクトレンズ関連角膜感染症
- アレルギー性結膜炎
白内障
白内障は、物を見る時にピントを合わせるカメラのレンズと同じ役割をする水晶体が濁る病気です。主な原因は加齢で、80歳以上では100%の人が発症しています。そのほか、目の外傷や炎症、アトピー、薬剤、放射線によるものや、先天的なものなどがあり、これは年齢に関係なく起こります。
症状
光をまぶしく感じる、視界がかすむ、黄色っぽく見える、物が二重に見えるなどが主な症状で、進行すると視力が低下します。
治療
濁った水晶体を手術で取り除き、眼内レンズを入れます。濁りのないもとの水晶体に戻すことはできません。
緑内障
緑内障は、眼圧やその他のストレスの影響で視神経が傷んで減っていき、視野が徐々に欠けていく病気です。眼圧とは目の中の房水で調整されている眼の中の圧力、眼の硬さのことです。いったん障害された視神経や視野は元には戻りません。
症状
多くの緑内障では、かなり進行するまで自覚症状に乏しいのが特徴です。隅角(目の中で産生される房水の出口)が狭いタイプの緑内障は、眼圧が急激に上昇して目の痛みや頭痛、充血などを伴うことがあります。
治療
眼圧を下降させることで、緑内障の進行を抑制します。点眼薬による治療が基本ですが、緑内障の種類や患者さんの状態によっては、レーザー治療や手術を行います。
網膜剥離
網膜剥離は、光を感じる細胞が並んでいる薄い膜である網膜が、眼球の内側からはがれる病気です。主な原因は加齢ですが、強い近視、目の打撲や手術、アトピー、糖尿病、ぶどう膜炎などが原因の場合は、若年者でも起こります。
症状
初期には、小さなゴミのようなものが見える飛蚊症や視野の端の方がチカチカする光視症が現れます。進行すると、視野が欠け、視力低下が起きます。
治療
初期では、レーザーによる光凝固術で剥離の進行を予防できますが、進行した場合は手術ではがれた網膜を元の位置に戻します。
黄斑円孔
網膜の中心部にあり、物を見るのに一番重要な部分を「黄斑」といいます。黄斑円孔とは、この黄斑に小さい円(まる)い孔(あな)(0.5mm程度)が生じる病気です。視力の要であるため、障害されると網膜の他の部分が正常でも、見え方に大きな影響を及ぼします。中高年、女性、強度近視の方の発症率が高くなります。
症状
初期では、物が歪(ゆが)んで見え、視力が低下します。進行すると、周囲はある程度見えるのに中心が見えなくなります。
治療
硝子体手術で孔(あな)をふさぎます。
黄斑上膜
(黄斑前膜)
加齢などにより硝子体が収縮したとき、硝子体の一部が黄斑部分の網膜の上に残り、やがて厚みを増した膜(黄斑上膜)となって黄斑をおおう病気です。加齢が主な原因ですが、網膜剥離やぶどう膜炎に伴って起こることもあります。
症状
霞(かす)んで見えるようになり、徐々に視力が低下します。また、黄斑上膜が縮んでくると網膜を引っ張り、しわをつくるため、物が歪(ゆが)んで見えるようになります。
治療
硝子体手術で膜を除去します。
硝子体出血
硝子体出血は、眼の中で硝子体と呼ばれる透明なゼリー状の部分に血液が流れ込む状態です。最も一般的な原因は、網膜の血管の破裂や網膜剥離、糖尿病網膜症などの網膜疾患です。また、眼球の外傷や網膜血管の病気、加齢に伴う硝子体の収縮なども原因となります。
症状
突然の視界の暗転や点滅、暗い影、または赤みが現れることがあります。一般的に、軽度の硝子体出血は自然に回復するため、定期的に眼底検査によって確認します。重度の出血や網膜剥離の兆候がある場合は硝子体手術が行われる場合もあります。
治療
出血の原因によって異なりますので、適切な治療を行うために眼科医を受診してください。
加齢黄斑変性
加齢により黄斑が障害される病気で、高齢者、男性、喫煙者に多く見られます。網膜色素上皮が緩やかに傷(いた)んで起こる萎縮(いしゅく)型と、異常な血管が脈絡(みゃくらく)膜(まく)にでき、網膜の方に伸びて出血したり血液成分がもれたりする滲出(しんしゅつ)型があります。日本人は滲出型が殆(ほとん)どです。
症状
周囲はある程度見えるのに中心が歪(ゆが)んで見えます。進行すると中心が見えなくなり、視力が低下します。
治療
萎縮型に治療方法はありません。滲出型は、異常な血管が増えるのを抑(おさ)える抗VEGF薬を硝子体に注射する治療法と、光に反応する薬を点滴後、弱いレーザーを照射して異常な血管を消失させる光線力学的療法、レーザー光凝固術があります。
斜視(しゃし)
ふつう、ものを見る時は両目とも同じ方向を見ています。片目が見たい方向を見ていても、もう片目が上下左右にずれた方向を見ていることを斜視といいます。目の筋肉や神経の異常、遠視、病気やケガによる片目の視力低下などで起こります。乳幼児期に斜視が起こると、正常な見やすい目の方ばかりで見るため、片目の視力が十分に育たなかったり(弱視(じゃくし))、ものを立体的に見る力や奥行感が弱くなったりします。
症状
視線のずれ、片目をつぶり見ている、頭をかしげる、ものが二つに見える(複視)など
治療
眼鏡(めがね)やコンタクトレンズによる視力の改善、プリズム(一定方向に光を曲げる)眼鏡(めがね)による矯正、良いほうの目に遮蔽具を付けて、悪い方の目で見る訓練をします。さらにボツリヌストキシンという薬による治療や手術があります。
弱視(じゃくし)
眼鏡(めがね)やコンタクトレンズなどを使用しても視力が十分に出ない状態を弱視といいます。乳児のときにはぼんやりしている視力が、ものを見ることで発達し、6歳頃には大人と同じ視力になるといわれています。強い近視(きんし)・乱視(らんし)・遠視(えんし)、斜視(しゃし)、目の病気などの影響で、視力の成長期(生後1ヶ月から8歳頃まで)に十分ものを見ることができないと、視力が発達せず、弱視になります。
症状
目を細める、近づいてものを見る、メガネをかけても片方の目の視力が悪いなど。
治療
眼鏡(めがね)による矯正や良い視力の目に遮蔽具をつけて視力の悪い目で見る訓練、アトロピン点眼液による治療などがあります。
近視(きんし)
近視とは、目の奥行きが長いために網膜(もうまく)で合うはずのピントが前方にずれ、遠くが見えにくいことをさします。遺伝と環境の両方が原因と考えられています。単純近視と病的(びょうてき)近視があり、単純近視は眼鏡(めがね)などで矯正できます。一方、病的近視は、眼球の後ろがポコンと出て変形しているため、視神経(ししんけい)が傷(いた)んだり、網膜がはがれたり、網膜の中心の黄斑(おうはん)部で出血したりするので、眼鏡(めがね)などで矯正できません。
症状
単純近視では、遠くが見えにくい。病的近視では、突然の視力低下、ものがゆがんで見える、遠くも近くも見えにくいなど
治療
単純近視は、眼鏡(めがね)やコンタクトレンズによる矯正、睡眠時に特殊なコンタクトレンズで角膜の形を矯正するオルソケラトロジー、LASIK、眼内コンタクトレンズ(ICL(アイシーエル))手術があります。病的近視は、病状に応じて抗(こう)VEGF(ブイイージーエフ)薬(やく)の眼内注射や硝子体(しょうしたい)手術などを行います。
乱視(らんし)
乱視とは、角膜や水晶体にゆがみがあるため、1点にピントが合わず、ものがぼやけて見えてしまう状態をいいます。丸いカーブ型の角膜が、ラグビーボール型にゆがんで起こる正(せい)乱視、角膜の病気・手術などで起こる不正(ふせい)乱視があり、ほとんどの乱視は正乱視です。
症状
近くのものも遠くのものもぼやけて見える、片目で見るとものが二重に見える、眼精(がんせい)疲労(ひろう)、弱視(じゃくし)など
治療
正乱視は、眼鏡(めがね)やコンタクトレンズで矯正します。不正乱視は、眼鏡(めがね)で矯正することはできませんが、ハードコンタクトレンズで矯正できる場合があります。また、18歳以上では、角膜の手術やレーザー治療で矯正できる場合もあります。
遠視(えんし)
遠視とは、目の奥行きが短いために網膜(もうまく)で合うはずのピントが後方にずれて、遠くも近くも、ものがぼやけて見える状態をいいます。多くの場合、特別な原因はありません。小児ではピントを合わせる調節機能が高いので、詳しい検査をしないと遠視を診断できないことがあります。強い遠視の場合、特に乳幼児(にゅうようじ)は弱視(じゃくし)や内斜視(ないしゃし)などを引き起こすこともあるため、注意が必要です。
症状
近いものの方がぼやけて見える、目や体が疲れやすい、頭痛など。子供の場合は、作業や集中が長続きしないといった症状として現れる場合もあります。
治療
眼鏡などで矯正します。18歳以上では、角膜へのレーザー治療で矯正できる場合もあります。
老視(ろうし)・老眼(ろうがん)
ものを見るとき、目は毛様体筋という筋肉を使って水晶体(すいしょうたい)の厚みを変え、ピント合わせ(調節)をしますが、加齢に伴い毛様体筋の収縮力が落ち、かつ水晶体が硬くなると厚みが変化しづらくなるため、調節力が低下します。この状態を老(ろう)視(し)といいます。一般的に、40歳前後から始まる目の自然な変化です。
症状
手元と遠くのピントを自在に切り替えられない、暗いところで見えにくい、など。
治療
硬くなった水晶体が元に戻ることはないので、根本的な治療方法はありません。眼鏡(めがね)やコンタクトレンズを使用します。
糖尿病網膜症
(とうにょうびょうもうまくしょう)
糖尿病網膜症は、糖尿病の3大合併症の1つで、光を感じる細胞が並んでいる網膜の血管が損傷(そんしょう)を受け視力が低下する病気です。損傷を受けた血管の代わりに構造のもろい新生(しんせい)血管(けっかん)ができて眼内に出血したり、網膜剥離や緑内障をおこしたりすることもあります。
症状
黄斑という網膜の重要な部分がむくむと歪んで見え中心が見づらくなります。新生血管などから出血すると、視野に黒い影やゴミのようなものが見える飛(ひ)蚊症(ぶんしょう)や急な視力低下がおこります。
治療
黄斑のむくみには薬剤の眼局所注射、レーザーによる網膜光凝固などがあります。レーザー治療は新生血管の発生の予防や、出現してしまった新生血管を減らす場合にも用いられます。網膜(もうまく)剥離(はくり)や硝子体(しょうしたい)出血が起こった場合には硝子体手術を行います。
ぶどう膜炎
眼の中に炎症を起こす病気は「ぶどう膜炎」と呼ばれます。その原因には、感染症、全身の免疫異常、外傷、悪性腫瘍(しゅよう)など様々なものがあります。
症状
かすみがかかったように見える、飛(ひ)蚊症(ぶんしょう)、まぶしく感じる、視力低下、眼痛、充血などがあります。症状は、だんだん悪くなる場合や、一時的に良くなり再び悪くなることを繰り返す場合があります。
治療
病状によって、ステロイド薬の点眼、目への注射の他や、ステロイド薬・免疫抑制(よくせい)薬・生物学的製剤の全身投与を行います。感染症が原因の場合は、その原因に応じて抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬などが用いられます。合併症に対して手術が必要になることもあります。
ドライアイ
涙は油の層と水の層からなり、目の表面を覆って、目を守るバリアの働きをしています。ドライアイは、涙の量が減ったり、油層と水層のバランスが崩れたりすることで、目の表面を傷つけてしまう病気です。加齢も原因の1つですが、パソコン・スマートフォンなどの画面を長時間見る、冬場やエアコンによる空気の乾燥、コンタクトレンズの装用、点眼薬の防腐剤、涙の油層を作るマイボーム腺の病気なども原因になります。
症状
目が乾く、目がゴロゴロする、まぶしい、目がかすむ、目が疲れる、目が痛い、目が赤い、目がかゆい、目に不快感がある、理由なく涙が出るなどです。
治療
涙の不足成分を補う薬や目の炎症を抑(おさ)える薬を点眼します。重症の場合は、涙の排出経路の涙点(るいてん)に栓(せん)(涙点プラグ)をして涙をためる治療を行います。
霰粒腫
(さんりゅうしゅ)
まぶたの裏にあるマイボーム腺(せん)(脂質を出す腺)の出口がつまり、腺の中に脂質がたまってしこりができる病気です。感染症ではないので、他の人にうつることはありません。
症状
初期はまぶたに小さなしこりができ、目がゴロゴロします(異物感)。しこりは大きくなると赤くはれ、さらに大きくなると破れます。炎症がおこった場合は、麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と似た症状が出ることもあります(急性霰粒腫)。
治療
初期段階でしこりが小さい場合は、タオルで目を温めて脂の滞りをとる治療や、抗炎症薬の点眼・軟膏を使います。強い炎症が起きている場合は抗菌剤の点眼や内服も行います。しこりにステロイドを注射したり、手術でしこりを包んでいる袋ごと取り除いたりすることもあります。
麦粒腫
(ばくりゅうしゅ)
麦粒腫は、まぶたにある汗や脂(あぶら)を出す腺(せん)が細菌に感染して起こる病気で、「ものもらい」「めばちこ」「めいぼ」と呼ばれるものです。
症状
まぶたの一部が赤くはれ、痛みやかゆみがあります。進行すると、はれ、赤み、痛みがさらに強くなり、その部分に膿(うみ)をもつようになります。放置するとはれた部分が破れ、膿が出てきます。膿が出てしまえば、症状は改善し、治ることが多いです。
治療
抗生物質の点眼薬や眼(がん)軟膏(なんこう)で治療します。はれが強い場合には、内服薬を用いることもあります。膿がたまって白い点が見える場合は、針やメスを使用して膿を出す治療を行うことがあります。
流行性角結膜炎
(りゅうこうせいかくけつまくえん)
アデノウイルスと呼ばれるウイルスに感染して起こる角膜と結膜の炎症です。非常に感染力が強く、家、学校、職場などで、ウイルスの付いた物や場所に触れた手で目を触るなどして感染します。夏に子供が多く感染しますが、大人も含め幅広い年齢でおこります。
症状
急に白目が充血して赤くなる、目やにや涙がたくさん出る、まぶたのはれ、目の痛みやゴロゴロ感などがあります。耳の前のリンパ節がはれ、押すと痛みを伴う場合もあります。
治療
アデノウイルスに効く薬はありません。炎症を抑(おさ)えるために、抗(こう)炎症(えんしょう)薬(やく)を点眼します。また、ウイルスで弱った目に細菌が感染するのを予防・治療するために抗菌薬を点眼します。炎症が角膜におよびにごりが見られる場合は、ステロイドを点眼します。
コンタクトレンズ関連角膜感染症
コンタクトレンズの装用によって角膜の酸素が不足したり、角膜表面に小さな傷ができたりすることがあります。また、コンタクトレンズと角膜の間は涙による洗い流し効果が少なくなることから、角膜が感染しやすい状態になっています。そこにコンタクトレンズに付着した細菌、真(しん)菌(きん)(病原性のカビ)、アカントアメーバ(微生物)などが侵入することで角膜感染が引き起こされます。
症状
強い目の痛み、充血、視力低下、角膜のにごりなど。
治療
抗菌薬または抗真菌薬の点眼液や眼(がん)軟膏(なんこう)で治療します。場合によっては、目への注射、点滴、内服も行います。また、アカントアメーバには特効薬がないため、少しでも効果のある抗真菌薬や消毒薬を点眼する、角膜表面の感染部位を削(けず)るなどいろいろな治療法を併用します。感染を予防するためには、コンタクトレンズの装用方法を守り、洗浄、消毒を正しく行うことが重要です。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎は目の表面に、花粉などのアレルゲン(アレルギーをひきおこす物)が付着して起こる結膜炎です。花粉によっておこる季節性のものと、ハウスダストやダニなどが原因で一年中症状のある通年性のものがあります。また、アトピー性皮膚炎が原因で起こるアトピー性角結膜炎、幼少期の男の子に多くみられる重症のアレルギー性結膜炎である春季カタルなどがあります。
症状
目のかゆみ、充血、異物感(ゴロゴロする感じ)、目やに、涙が出る、まぶたの裏にぶつぶつができる
治療
抗アレルギー点眼薬による治療が中心です。症状によってステロイド点眼薬を使用します。また、春季カタルなど重症の場合は免疫抑制剤の点眼薬を使用します。