手術後の回復には個人差がありますが、多くの方の場合、約1週間で普段の生活に戻ることができます。ただし、草取りや重労働、温泉の利用、激しい運動などは、さらに時間を要する場合がありますので、眼科医の指示をしっかり守り、無理をしないよう心掛けてください。また、目に違和感や異常を感じた場合は、速やかに眼科医に相談してください。
手術直後の注意点

手術後は、手術した目を安静に保ち、清潔にすることが重要です。目を叩いたりこすったりする行為は避けてください。手術の傷口はしばらくして閉じますが、術後1週間は少しの衝撃で傷口が開く可能性があるため注意が必要です。
洗顔、洗髪、入浴など、目に細菌が侵入しやすい行動は控えてください。また、感染予防や炎症を抑える目薬は、医師の指示通りに点眼してください。
手術後に使用する眼帯は、細菌やホコリ、風から目を保護し、物理的な接触からも守るため、医師から許可が出るまでは外さないようにしてください。
手術直後の注意点
- 目を押さえない
- 洗顔・洗髪・入浴をしない
- 眼帯は、医師の許可が出るまで外さない
- お酒を飲まない(控える)
- 化粧・スポーツをしない
手術後のすごし方 日常生活のおよその目安
以下の表は、手術後の日常生活に関する当院からのおおまかなガイドラインです。個々の状況には個人差があるため、具体的な活動再開のタイミングは、医師の診察と指示に基づいて決定してください。また、仕事、趣味、スポーツなどの活動についても、安全性は活動内容により異なりますので、実施する前に医師に確認し、許可を得てから行うようにしてください。
洗顔
術後1週間の診察で異常がない場合、通常の洗顔が可能になります。それまでは、濡れタオルで顔を優しく拭く程度に留めてください。その際、手術した目をこすったり押したりしないよう十分注意してください。
洗髪
自宅での洗髪は、術後1週間の診察で異常がない場合に再開可能です。ただし、手術翌日から美容院での仰向け洗髪は可能です。一方、床屋でのうつ伏せ洗髪は自宅での洗髪と同様、1週間後からになりますのでご注意ください。
シャワー・入浴
シャワーは手術翌日から、入浴は3日後から可能ですが、首から上を濡らさないようにしてください。お湯が顔や目にかからないよう注意し、浴槽内では顔を触ったりタオルで拭ったりしないようにしましょう。
化粧や散髪、毛染め、パーマ
術後1週間の診察で異常がなければ、可能になりますが、手術後1か月は目の周りの化粧は控えるようにしてください。
仕事
屋内での事務仕事などは比較的早期に再開できますが、農作業や野外での作業、肉体労働、スポーツなどは術後2週間程度控えてください。なお、仕事や趣味に関する再開時期は個人差があるため、手術前に医師と相談することをおすすめします。術後の経過で変わる場合もあるため、診察時に確認してください。
運転
運転は、術後1週間程度で可能になることが多いですが、視力の回復や見え方の慣れには個人差があります。視力が回復していると感じても、医師の許可を得てから再開してください。
旅行
旅行は手術後1週間程度で可能になる場合が多いですが、行き先や宿泊期間によって注意が必要です。特に海外旅行や温泉旅行については、念のため術後1ヵ月程度控えてください。
サウナや水泳
術後1ヵ月程度は控えてください。1ヵ月後の診察で医師の許可があれば再開が可能です。
白内障手術後の見え方
個人差がありますが、手術後の視力が安定するまでには通常1~2ヵ月程度かかります。また、術後直後には色や光の変化を感じることがあります。
まぶしさ
手術により水晶体の濁りが解消されると、手術前よりも多くの光が目に入るようになるため、術後しばらくはまぶしさを感じることがあります。このまぶしさは時間の経過とともに徐々に軽減しますが、症状が改善しない場合は医師に相談してください。
青っぽくみえる
水晶体を摘出して透明な人工レンズを挿入すると、術後しばらくは青色の光が網膜に強く届き、青みがかった見え方をすることがあります。しかし、時間の経過とともに目が慣れ、通常通りの見え方に戻ります。
自動車や街灯のライトがまぶしい、輪がかかったように見える
眼内レンズに光が反射して散乱することで、夜間や明るい光を見た際に違和感を感じることがあります。多くの場合、時間が経つにつれて徐々に気にならなくなります。
視力が十分に回復しない
網膜や視神経に問題がある場合、白内障手術をしても視力の回復が見込めないことがあります。手術前に詳しく眼科検査を行いますが、白内障が進行していると他の眼の異常を発見することが困難になることもあります。その結果、手術を経て初めて網膜や視神経の問題が明らかになるケースもあります。
手術後、メガネを作るタイミングは?
通常、白内障手術後には以前のメガネは度数が合わなくなります。そのため、新しいメガネを作るのは視力が安定する1~2ヶ月後が良いでしょう。
手術直後にメガネなしでは日常生活に支障がある場合は、臨時のメガネを作成することをお勧めします。その際は医師に相談して、適切なアドバイスを受けてください。
白内障術後に気になる症状は?
白内障手術は全身への負担が少なく安全性が高いとされていますが、術後合併症のリスクがゼロではありません。特に、術後感染性眼内炎は重大な合併症で、適切な治療を行わないと失明の危険もあります。手術後も治療が完了したわけではなく、定期的に医師の診察を受け、目の違和感や異常を感じた場合は直ちに相談してください。
術後眼内炎
白内障手術後に発生する細菌性眼内炎は、目の中で細菌が増殖して化膿する重篤な合併症で、場合によっては失明に至ることもあります。しかし、その発生率は非常に低く、約4,000~5,000眼に1眼(0.02~0.025%)の割合で発生します。急性眼内炎は手術後数日から1週間以内に発症するのが一般的ですが、遅発性のものは1ヶ月から数ヶ月後に発症することもあります。以下の症状が現れた場合は、直ちに医師に連絡してください。
- 眼に強い痛みを感じる
- 充血
- 急激な視力の低下
- 普通の明るさでもまぶしく感じる
目の表面の出血(結膜下出血)
手術によって白目に出血や充血が生じることがありますが、通常は1~2週間で自然に解消されますので、特に心配は不要です。
一過性の眼圧上昇
手術に使用する薬剤や手術自体により眼圧が一時的に上昇する場合がありますが、点眼薬や内服薬による治療でほとんどが数日内に改善されます。
網膜剥離や浮腫(腫れ)
網膜が剥がれる(網膜剥離)や、網膜の中心部が腫れる(黄斑浮腫)といった合併症が稀に発生することがあります。その場合は、点眼薬や注射、さらには手術などの追加治療が必要になることがあります。
他にも稀なケースではありますが、生まれつきの眼球の形状により手術時に眼内出血が起こる可能性があります。また、もともと角膜内皮細胞の数が少ない方では、手術の負担に耐えられず角膜が白濁するリスクもあります。そのため、術後は経過観察をしっかりと行い、何か異常があれば速やかに医師にご相談ください。