担当医からのメッセージ
オルソケラトロジーは、夜間に特殊なコンタクトレンズを装用して寝ることにより、翌日は裸眼で過ごせる視力が得られる近視矯正法です。日中裸眼で過ごせることがメリットですが、眼鏡や日中のコンタクトレンズより近視が進みにくくなることが確認されており、高度近視を予防できる方法としても期待されています。日中コンタクトレンズが出来ない、またスポーツの時に眼鏡では不便な方に向いています。但し、矯正可能な近視の強さには限界があり、また乱視は矯正できないなど全ての方に適応となるわけではありません。一般的な視力検査と角膜の検査で適応があるかを確認できますので、まずはお気軽にご相談ください。
オルソケラトロジーとは
オルソケラトロジーとは、角膜矯正用の酸素透過性の高い特殊なハードコンタクトレンズを寝ている間に装用することで、睡眠中に角膜の形が矯正され、日中は裸眼で過ごすことができる近視矯正方法です。レーシックやICLと異なり、手術などで目を傷つけずに近視矯正ができます。通常、2週間程度の使用で目標視力になり、日中裸眼で過ごせるようになります。しかし、効果は可逆的で装用を止めると数週間で元に戻ります。
オルソケラトロジーの歴史は古く、1960年代に実用化が始まりました。その後、レンズの改良がすすみ、2001年に米国で承認を得て、日本では2009年に厚生労働省より承認取得されました。オルソケラトロジーの安全性や有効性については、広く認知されています。
日本のガイドラインでは、対象年齢は原則20歳以上で、未成年への使用は「慎重投与」となっています。学童に対するオルソケラトロジーによる近視進行抑制効果も認められており、慎重な判断の上、実施することが可能ですのでご希望の方は御相談下さい。
オルソケラトロジーによる近視矯正のしくみ
レンズの中心部が平坦になっており、患者様個人個人に合った形状にオーダーメードして角膜の形状を矯正し、近視を矯正する特殊なレンズです。
オルソケラトロジーが向いている方
- 近視の程度が中等度以下の方
(適応度数は、近視度数-4.00Dまで、乱視度数-1.50Dまで) - 日中の眼鏡やコンタクトレンズから解放されたい方
- ドライアイでコンタクトレンズができない方
- 職業上メガネでは不便な方やスポーツを裸眼で楽しみたい方
- レーシックやICLなどの手術に抵抗がある方
オルソケラトロジーが向いていない方
- 重度なドライアイの方
- 医師が装用に不適と判断した疾患がある方
- レーシックなどの屈折矯正手術を受けたことのある方
- 妊娠中・授乳中、または妊娠の計画がある方
- レンズを適切に使用できない方
- 定期検査に通えない方
- 常に乾燥した環境にいる方
- 職業上、常に適正な視力が必要で視力の変化があった時に業務の中止ができない方
学童のオルソケラトロジー使用について
近年、学童へのオルソケラトロジーの近視進行抑制効果が良好との報告があり、日本でも同様の効果があることが認められています。さらに10年間の長期データでも、オルソケラトロジーは近視進行を十分抑制し、安全性にも問題がなかったことが報告されています。
しかし、レンズケアなど十分に行えない、子供への使用は、保護者の十分な協力が重要になります。
【参考】
- Guan, M., et al., Int Ophthalmol, 2020
- Hiraoka, T., et al., Invest Ophthalmol Vis Sci, 2012
- Hiraoka, T., et al., Ophthalmic Physiol Opt, 2018
レンズの注意点
レンズの取り扱い
- 就寝時にレンズを装用するため、その事に慣れて頂く必要があります。
- レンズ使用やレンズケアを誤った方法で行うと、従来のコンタクトレンズと同様の合併症が起こる可能性が高まります。
合併症について
- 角膜上皮障害
- 角膜感染症
- アレルギー性結膜疾患
主に上記の合併症が考えられますが、治療中に眼の異常を感じられた時は、直ちにレンズの使用を中止して、速やかに医師の診察を受けて下さい。
治療の効果について
- 角膜の形状が安定するまで、1週間から1ヶ月程度の期間が必要です。
- そのため、視力が安定するまでの期間及び、治療を一時中断した場合等は、 眼鏡や使い捨てコンタクトレンズが必要となる場合があります。
- 効果が安定してからも、毎日もしくは数日に一度は、レンズを装用して頂く必要があります。
- 夜間や暗い場所で、街灯や車のライトなどがにじんだり、まぶしく感じるといった症状が発生することがあります。
- 治療の効果や持続性については個人差があり、車やバイク等の運転や視力変化が心身の危険に結びつくような作業は、特段の注意を要します。
治療のスケジュール
1検査前の説明
パンフレット等をお読みいただいたあと、医師またはスタッフにより、治療について説明させていただきます。
2適応検査
問診のあと、視力や眼圧・角膜形状等の検査を行い、眼科専門医の診察を受けていただき、治療に適しているかを判断いたします。コンタクトレンズを使用中の方は、精密検査の前に装用を中止していただきます。
ハードレンズ 4週間以上
ソフトレンズ 2週間以上
3精密検査
適応検査の結果、装用可能と診断された方は、角膜形状等の精密検査結果に基づき、トライアルレンズ(お試しレンズ)を実際に装用します。
4治療レンズの決定
トライアルレンズによる近視矯正が問題無いと判断されたら、実際治療に使用するレンズを決定し、注文します。
5治療開始レンズお渡し
ご本人にあった治療用レンズを装用し、角膜形状が適正に近視矯正されているか最終確認します。レンズの取り扱い方法や、定期検査のスケジュールについて説明を受けていただきます。
6定期検査
レンズ装用翌日、1週間後、2週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、以降3ヶ月毎の定期検査を受けていただきます。
※ご自身の眼の状態によっては定期検査の間隔を変更する場合があります。
よくあるご質問
治療は近視矯正のみですか?遠視も治療可能ですか?
治療は近視の矯正が中心となります。遠視は矯正することができません。
老視がありますが、適応はありますか?
レンズの使用により、近見視力の障害や眼精疲労の原因となる場合がありますので、医師にご相談下さい。
レンズの装用時間は、長く装用した方が効果が高くなりますか?
一般的には、就寝時に7~8時間程度の装用時間で効果が発揮されます。
就寝時以外や、必要以上に長時間のレンズ装用を行う事により、矯正効果が十分に発揮されない場合や、合併症を発症するリスクを高める事になりますので、装用スケジュールを守るように心掛けて下さい。
車の運転免許については、何か影響がありますか?
○自動車運転免許について
治療により、裸眼視力が基準以上に矯正されている免許保有者には「眼鏡等」の免許条件が付されます。
※オルソケラトロジーレンズ使用者は、新規又は更新時の視力適正検査時に本品を使用している事を申し出て下さい。
※治療中であっても、基準以上の視力が確保されていない場合において、裸眼のまま運転すると免許の条件違反となります。
確定申告で医療費控除の対象となりますか?
オルソケラトロジー治療に関わる費用は、医療費控除の対象となります。
その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費のすべての領収書を大切に保管下さい。
お手続きについて詳しくは、居住地管轄の税務署へお尋ね下さい。