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眼圧が高い、眼圧が上がる原因

眼圧とは

目の中には、角膜や水晶体など血管のない組織に栄養を運び、老廃物を目の外へ運び出す働きをする液体(房水)があります。目の形状が保たれているのは、房水が一定の圧力を保ちながら目の中を流れているためで、この房水による目の内側から外側にかかる圧力を「眼圧」と言います。

眼圧が高い、眼圧が上がる原因

房水は、毛様体で作られ、目の中を循環し、排水路である線維柱帯(せんいちゅうたい)を通って目の外へ流れ出ます。この房水の流れがせき止められたり、排出路が詰まったりすると、目の中に房水がたまってしまうため眼圧が上昇します。また、眼圧は、いつも一定ではなく変動しています。1日の中での変動(日内変動)では、多くの方は朝方に眼圧が高い傾向があり、季節的な変動(季節変動)では、夏より冬の方が高い傾向にあります。体位やある種類の薬でも眼圧は変動します。

急激な眼圧の上昇や長期間にわたる高眼圧は、視神経にダメージを与え、視野障害を引き起こし、緑内障の原因となります。健康診断や人間ドックの眼底検査や眼圧検査で再検査が必要になった方、視覚に異常や不安を感じる方は、当院にご相談ください。

緑内障の検査

一般的に緑内障の診療に必須の検査として、眼圧検査、視野検査、眼底検査がありますが、最新の光干渉断層計(OCT)検査も非常に重要です。

眼圧の検査について

眼圧の検査には、空気眼圧計、ゴールドマン眼圧計、アイケアといった複数の眼圧計があり、患者さまに合わせて最も信頼できる方法で眼圧測定を行っています。

  • 空気眼圧計:眼球に風を当てて表面を一時的にへこませ、元に戻るまでの時間から眼圧を測る方法(非接触型)
  • ゴールドマン眼圧計:角膜に直接眼圧計を接触させて測る方法

緑内障が疑われる場合の検査

視野検査

アイモvifaⓇ
アイモvifaⓇ

視線を固定した状態で、見える範囲と網膜の感度を検査します。定期的におこなう視野検査のデータから、緑内障の進行の具合を調べ、治療方針を決めることができます。当院では、従来のハンフリー視野計に加え、両目を開けた状態で短時間に検査を行えるアイモvifaⓇを導入しており、従来のものより短時間で検査を行えます。

細隙灯顕微鏡検査

眼瞼、結膜、角膜、強膜、前房、虹彩、水晶体、前部硝子体など詳細に調べることができます。特殊なレンズ等を用いれば、隅角や後部硝子体、網膜、視神経乳頭の観察も可能です。緑内障の有無や種類が分かる場合があります。

隅角鏡検査

隅角鏡というレンズを角膜に接触させ、目の隅角の状態や各部位(線維柱帯や毛様体等)の細かい構造を詳しく観察するための検査です。緑内障の病型を診断するために重要です。

眼底検査

視神経乳頭や網膜神経繊維層に異常がないか調べる検査です。眼底鏡を眼科医が持って眼底を観察する方法と専用の眼底カメラで眼底写真を撮影し、調べる方法があります。眼圧が正常でも視神経の損傷が見つかることがあります。

OCT(光干渉断層計)

眼底に弱い赤い光を当て、その反射を解析することで前眼部や網膜の断層画像を得ることができる装置です。当院には最新式の前眼部OCTと後眼部OCTがあり、以前は発見が難しかった小さな変化や細かい変化をとらえることができます。前眼部OCTでは、進行しやすい緑内障の目に特徴的な隅角の変化や手術後の状態を精密に検査できます。後眼部OCTでは、網膜や視神経を検査し、緑内障でいたんだ視神経線維層と細胞層の異常と進行をより早期に発見できます。視野検査で異常が現れていないごく早期の緑内障も発見できるため、積極的に検査を行っています。

OCTと視野検査
視野検査とOCT
OCTで網膜厚の菲薄化(赤い部分)が上下反転して視野障害と一致します。
後眼部OCT(Toriton)
後眼部OCT(Toriton)
前眼部OCT(CASIA2)
前眼部OCT(CASIA2)

また、上記以外の検査を行うこともあります。

緑内障の治療

緑内障に対する確実な治療法は、眼圧を十分に下降させることです。眼圧を下降させることによって緑内障の発症も進行も抑制できることが分かっています。隅角が開いているタイプの緑内障(開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障)では、薬で眼圧を下げる治療から開始します。閉塞隅角緑内障では、レーザーや手術による治療が選択されることもあります。

眼圧を下げる治療方法

薬物療法(主に点眼治療)

眼圧を下げる目薬を点眼して治療します。通常は1種類を使用して治療を始めますが、患者さんの状態に応じて2種類以上使用して治療する場合もあります。正しい点眼方法を守り、治療を続けることが非常に重要です。

緑内障治療薬

緑内障を治療する目薬(緑内障点眼薬)は、いずれも眼圧を下げる薬です。たくさんの種類がありますが、眼圧を下げる仕組み、効果、点眼回数、副作用などに違いがあります。2種類以上の目薬で治療する場合、仕組みの違う薬は一緒に使用することができますが、相性の悪い組み合わせもあります。緑内障や目の状態、他の病気にかかっているか等、総合的に判断して薬を決定します。

緑内障点眼薬とその特徴

緑内障点眼薬は、眼圧を下げる仕組みによって、大きく2つのタイプに分けられます。目の外へ流れ出る房水の量を増やす(房水流出促進)タイプと作られる房水の量を減らす(房水産生抑制)タイプです。また、その他に、この2つのタイプの薬を組み合わせて1本に合わせた配合剤があります。

(1)房水流出促進

房水が流れ出る通路を広げ、房水流出を促進することで眼圧を下げます。通路には、ぶどう膜強膜流出路と線維柱帯流出路があります。

ぶどう膜強膜流出路タイプの薬
  • プロスタノイド受容体関連薬<FP受容体作動薬>
    ラタノプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ビマトプロスト
  • α1遮断薬
    ブナゾシン
線維柱帯流出路タイプ
  • 副交感神経作動薬
    ピロカルピン
  • イオンチャンネル開口薬
    イソプロピルウノプロストン
  • ROCK阻害薬
    リスパジル
ぶどう膜強膜流出路タイプ+線維柱帯流出路タイプ
  • ★プロスタノイド受容体関連薬<EP2受容体作動薬>
    オミデネパグ・イソプロピル
(2)房水産生抑制

毛様体で作られる房水の量を減らすことで、眼圧を下げます。

  • β遮断薬
    チモロール、カルテオロール、ベタキソロール、レボブノロール
  • 炭酸脱水酵素阻害薬
    ドルゾラミド、ブリンゾラミド
(3)房水産生抑制+房水流出促進
  • α1β遮断薬
    ニプラジロール
  • α2作動薬
    ブリモニジン
(4)配合剤

点眼の負担を減らすために、(1)から(3)までのタイプの違う薬を2種類組み合わせて1本にした薬です。

  • ラタノプロスト+チモロール
  • ラタノプロスト+カルテオロール
  • トラボプロスト+チモロール
  • タフルプロスト+チモロール
  • ドルゾラミド+チモロール
  • ブリンゾラミド+チモロール
  • ブリモニジン+チモロール
  • ブリモニジン+ブリンゾラミド

レーザー治療

レーザー虹彩切開術(LI)
レーザー虹彩切開術(LI)

開放隅角緑内障や正常眼圧緑内障では、緑内障点眼薬では十分に眼圧が下がらない場合や、眼圧は下がっても視野障害が進行する場合、副作用や他の事情で目薬が使用方法通りに点眼できない場合、レーザー治療を検討します。
この治療では、特定の部位にレーザーを当て、房水の流れを改善することで緑内障の進行を抑制します。レーザー虹彩切開術(LI)、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)など

虹彩と水晶体が密着し房水の流れが止まる(瞳孔(どうこう)ブロック)場合と、たまった房水によって眼圧が急激に上がり、視神経に障害を与える場合があります。レーザー虹彩切開術は、レーザーで虹彩に穴をあけて房水の新しい通路を作る手術のことで、瞳孔ブロックの予防、または起きてしまった瞳孔ブロックを解除するための手術です。隅(ぐう)角(かく)が狭い方や閉塞(へいそく)隅(ぐう)角(かく)緑内障の方などが対象となります。

手術治療

開放隅角緑内障や正常眼圧緑内障では、緑内障点眼薬では十分に眼圧が下がらない場合や、眼圧は下がっても視野障害が進行する場合、副作用や他の事情で目薬が使用方法通りに点眼できない場合やレーザー治療後も眼圧が十分に下がらない場合に、外科手術による治療を検討します。手術治療の目的は、眼圧をより低くすることで視神経に加わる圧力を減らし、視野障害の進行を遅らせたり止めたりすることです。いたんだ視神経が元に戻ることはないため、手術治療で視力や視野が回復することはありませんが、生涯にわたって視野と視力を保つための重要な治療法の1つです。
当院では、以下のような手術を行っておりますが、緑内障のタイプや進行状況に合わせ、最も適切な治療を選択します。