白内障は目の水晶体が白く濁る病気で、手術ではこの濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを挿入します。そのため、白内障自体が再発することはありません。
しかし、手術後数カ月から数年で白内障の症状に似た視力低下や目のかすみといった症状が起こることがありますが、これは白内障の再発ではなく「後発白内障」と呼ばれる現象です。この現象は、白内障手術で水晶体を取り除いた後、水晶体嚢(のう)と呼ばれる水晶体を包んでいる袋が、術後に徐々に濁ることで発生します。
後発白内障の原因
白内障手術後、水晶体嚢に残った水晶体の細胞が徐々に増殖することで、透明だった嚢が次第に濁ってくることがあります。軽度の段階では症状は現れませんが、濁りが進行すると光の透過性が低下し、視力が低下することがあります。後発白内障は、術後5年以内に約20%の方が発症し、長い年月をかけて最終的にはほぼ全ての人に発症すると言われています。ただし、発症の時期や濁りの程度には個人差があり、軽度の場合は自覚症状がないことも多く、必ずしも治療が必要になるわけではありません。
特定の疾患を持つ方、例えば糖尿病網膜症、ぶどう膜炎、アトピー白内障、落屑症候群、網膜色素変性、高度近視を持つ方は、後発白内障が発生しやすいとされています。
後発白内障の症状

後発白内障は、白内障と同様にゆっくりと進行します。濁りが強くなると、「白くぼやけて見える」「視力が低下した」「物が見えづらい」といった症状が現れることがあります。手術後、数週間で症状を自覚する方もいれば、数年経ってから見えづらさを感じる方もいます。
後発白内障は進行がゆるやかなことが多いため、自覚症状がないまま過ごし、視力検査を受けて初めて視力低下に気づくケースも少なくありません。そのため、症状がなくても白内障手術後は定期的に眼科を受診し、目の状態を確認することが重要です。
後発白内障の治療方法
後発白内障の治療は、メスを使用した手術ではなく、レーザー治療で水晶体嚢(のう)の濁りを取り除くことができます。


治療は「YAGレーザー」と呼ばれる特殊なレーザーを用いて行います。点眼麻酔をした後、レーザー用のコンタクトレンズを装着し、濁った後嚢にレーザーを照射して切開することで濁りを解消します。治療は数分程度で完了し、痛みもほとんどありません。翌日には視力の回復が期待できることが多いです。
治療後は、炎症を抑える点眼薬を一定期間使用しますが、特別な行動制限はなく、通常通りの生活が可能です。
なお、後発白内障は治療せずに放置すると視力低下や見えづらさが悪化する可能性があるため、症状にお気づきの際は早めの対応を心掛けましょう。
レーザー治療の合併症
レーザー手術後に視界に虫が動いているような、黒い影が見える症状が現れることがあります。これは、レーザーで水晶体嚢を切開した際に生じた水晶体細胞の塊が原因ですが、時間が経つにつれて徐々に改善されます。ただし、濁りが強い場合は改善にも時間がかかることがあります。
また、非常に稀ですが、レーザー治療後に眼圧の上昇や、網膜が剥離するなどの重篤な合併症が起こる可能性があります。そのため、治療後に見え方に違和感があったり、目に痛みを感じる場合は、早め医師にご相談ください。